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谷川岳肩の小屋―二人 [奥利根/北関東]

谷川岳肩の小屋02.jpg

小屋の入り口から見る俎嵒山稜はスッキリして形が良い。

学生最後の春四月、OT君と連れ立って冬季小屋に入った。

曇り空の下、西黒尾根の取り付きからアイゼンを付け、あまり道草を食わずに歩いた。

小屋に荷物を置き、予定どうりに俎嵒山稜に向かったのだが、川棚ノ頭に着いた時には雨交じりの風が強くなってしまい、ゆっくりも出来ず早々に引き返した。

帰路、ますます強くなる風に追いたてられて急ぎ足で歩けば、コルからの登りは息も絶え絶えになった。

二人の間にあるラジウスは大きな音と青白い炎を上げ我々を暖めようとしていたが、所詮無駄なことで隙間風が入る小屋は相変わらず寒かった。

シュラフの中からOT君に、六月に穂高岳へと誘いかけると、無口な彼も話に熱を帯び、二人は山にいる喜びを十分感じていた。

翌日茂倉岳から土樽へと下ったのだが、途中一ノ倉岳で霧にトレースを隠され往生した。

学生時代幾度となく通った谷川岳は、霧、雨、風と一度も微笑んでくれなかったが、この年10月に訪れた時にはやっと青空で迎えてくれ、雪が来る前の赤を存分に見せてくれた。

卒業するとすっかり山から遠ざかり仲間達とも会う機会も少なくなった。

そして近年、山歩きを再開した私にとって、谷川岳はあの時と同じく「近くて良き山」であり続けている。


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コメント 6

ザック

情景が思わず目の裏に
浮かんでは・・消えていく・・
そんな錯覚に陥りました。

お気をつけて・・山の旅を。
by ザック (2009-10-13 22:40) 

werewolf

うーむ、絵画のような掛け軸のような一枚ですね。

by werewolf (2009-10-13 23:29) 

Reny

面白い写真ですね~。
ほんと、掛け軸みたいって私も思いました^^

学生時代の時間って貴重だったなぁと思いますよね。
私ももっといろんな事を経験しておけば良かったなぁ…。
by Reny (2009-10-14 09:52) 

trekkeng

額に飾った絵のようなきれいな写真ですね。谷川岳にはまだ行ったことはありませんが、来年の季節の良いときには行ってみたいと思います。
by trekkeng (2009-10-15 07:55) 

ロック

山友達はイイですね~。

by ロック (2009-10-15 14:47) 

山子路爺

to ザックさん
コメント有り難うございます。
昨夜無事帰って来ました。山は冠雪してました。
もうすぐ気高く美しい姿になるでしょう。


to werewolf さん
コメント有り難うございます。
写真はあまり意識せずに撮っています。
俎嵒はチョット格好がいいんですよ。好きな場所です。


to Reny さん
コメント有り難うございます。
授業サボって…でも実験サボるとレポートが書けなくなるので…
出席日数より、試験の点数より実験レポートがヤバイのです…。


to trekkeng さん
コメント有り難うございます。
ぜひ谷川岳も訪れてください。
オキの耳の先の鳥居のピーク(勝手に呼んでいる)あたりから一ノ倉沢の眺めが好きです。


to ロックさん
コメント有り難うございます。
山から友に「羨ましいだろう!」とメールします。
彼らから「今、早池峰山だぁ!」などとメールが来ます。
休みが合わず計画は流れてばかりです。
by 山子路爺 (2009-10-16 19:35) 

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