山に泊まりに―赤岳天望荘

風が強くなった。

その風に乗って阿弥陀岳を糸のような雲が流れる。

しばらくすると薄いベールが山頂を覆いだし、沈み行く太陽に輝く。

そしてそれは、次第に厚みを増してしだいに山頂を隠してゆく。

寒さのためか皆は小屋の中に入って辺りには誰もいない。

私だけがこの美しい光景に見惚れている。

 

 

 

日没直後、暮れきらない空の下に槍穂高連峰があった。

撤退したルートの再計画をどうしたものかと思いながら、ファインダーを覗いた。

風は力を増して、発電機のプロペラをいきよいよく回した。

もう山の姿は見えなくなって冷え切った体を小屋に戻そうとすると、赤岳頂上小屋の明かりが夜陰に浮かんでいた。

どうやらこの風は天候の悪いほうへの急変を告げているらしい。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2011年8月30日　赤岳天望荘にて

 

タグ：阿弥陀岳 槍穂高連峰 赤岳天望荘

コメント 24

素晴らしい景色に見入って、時間を忘れていると、
体が冷え切っているのに気がつかないことがあります。
こんな美しい空は、いつまでも見ていたいですね。
by nousagi (2011-09-10 00:41) 

先日の仙丈ケ岳、小屋の中に入るのがもったいなくて、
外でばかり過ごしていました　＾＾；
夜は外のベンチに寝転がって流れ星や人工衛星を探して遊びました♪
by よしころん (2011-09-10 07:06) 

たしかに雲の動きが急ですね。
今夏は晴天が続きませんでしたね。
by ナツパパ (2011-09-10 09:36) 

八ヶ岳、どこの山の展望はいいですが、阿弥陀の山頂からみる景色が一番好きだったりします＾＾
２日目は阿弥陀に寄ったんでしょうか？展望荘からだといろんな山が選べていいですね♪
by fukusuke (2011-09-10 09:38) 

赤岳天望荘良いですね。
私は赤岳頂上小屋に泊まりました。
アレは確か中越地震のあった２００４年秋でした。
by kamoshikanagai (2011-09-10 20:32) 

台風前の不安定な天候は時に不思議な光景を見せてくれますね！
なんだか雲の中に吸い込まれそうです・・・・。
by hidamari (2011-09-10 20:35) 

やっぱり山の景色は、夜明けと日暮れが美しいですね。それは分かっているのですが、ほとんどが日帰り山行の私は、経済的負担が少ない以上に損をしているのでしょうねぇ。
by makiwarikun (2011-09-10 21:27) 

↑私も同様で、小屋に泊まった時しか朝焼け、日の入りの夕景が見れませんね。
今度八つに行くときは、小屋泊まりにしようと思ってもなぜか日帰りになってしまいます。　また、今日も日帰り、硫黄岳へ、でも天気は良く横岳、赤岳、阿弥陀の三峰がきれいに見えました。　八つはコースプランが面白いですね。
by Jetstream777 (2011-09-10 22:47) 

ドラマチックな山の空・・・・きれいですが・・・・
変化が恐いですね〜＾＾；

by hatumi30331 (2011-09-11 00:11) 

山の天候は急変しますよね。
すぐに山頂を隠そうとするんだよなぁ～
by zak (2011-09-11 03:35) 

すばらしい展望ですね。槍・穂高もよく、見えますね。撮影に往きたくなりました。
by テリー (2011-09-11 15:03) 

先日、思いつきで単独登山して少し怖い思いしました＾＾；
やはり普段からトレーニングして、知識も学んでからでないといけませんね。
いつか、山小屋に泊まるような登山したいです。

お久しぶりですが、ようやく新しいブログを立ち上げました。
ハンドルネームも変えて心機一転です。どうぞよろしくお願いします。
by imarin (2011-09-11 16:58) 

山の素晴らしい景色、もう何年も見ておりません。

友人とかつて八ヶ岳に行ったときが最後かも…。

by genpati (2011-09-11 17:49) 

to nousagi さん
山に泊まる楽しみの一つが朝夕の色の移り変わりですね。
今回は翌朝はまったく白一色でしたが、その分夕方は変化があって楽しみました。寒かった！

to よしころん さん
仙丈ガ岳は随分良かったようですね。
晴れた日の山の夜は、本当に星が降るようで感動しますよね。
「小屋に入るのがもったいない」その気持ちわかります。

to ナツパパ さん
本当に今年の夏はお天気がおかしかったですね。
この日も夜半からは早くも台風の影響で、風と雨がやってきました。ノロノロ台風で長い間荒れ模様だったと思います。

to fukusuke さん
その阿弥陀岳からの展望は今回もお預けとなりました。
行きに阿弥陀岳に寄ってからと思っていたのですが、直接小屋に入ってしまい、帰りは時間制限があってこれも直接行者に下ってしまいました。

to kamoshikanagai さん
頂上の小屋という案もあったのですが、風呂に入れるという事で天望荘にしました。今度は頂上の小屋に泊まりたいなぁ。

to hidamari さん
空の変化をすごく楽しんできました。
皆さん談話室でビールをやっていましたが、一人寒さに耐えながら何枚もシャッターを切っていました。実は下戸なんです。

to makiwarikun さん
昇る朝陽に喜びを……沈み行く夕陽に憂いを……な～んてね。
山の楽しみは人それぞれですが、私の場合は「山に泊まる」事がその大きな部分を占めているようです。

to Jetstream777 さん
硫黄岳のほうは行った事が無いです、というより八ヶ岳の回数が少ないのです。アプローチしやすいのに……これから回数を増やそうかな。

to hatumi30331 さん
台風もまだ南の海上遠くなので大丈夫ですが、2日後くらいには厳しかったかも。
そんな時に山にいたことは無いのですが、怖さを感じるかもしれませんね。

to zak さん
そうですね。それに低気圧等の影響を早い段階から受けて遅くまで残る気がします。
天気がいい時間が短いから、晴れた日の感激もひとしおという事でしょうか。

to テリー さん
ジックリ腰を据えて写真を撮る……という事もしてみたいのですが、どうしても歩くほうに重点がいってしまいます。
小屋に入れば時間は結構有るのでチャンスを待つことが出来ます。
でも私の場合は、なかなかチャンスはものに出来ませんが。

to imarin さん
おや、何処に行ったのでしょうか？そしてどんな怖い思いをしたのでしょうか？

さきほど新ブログにお邪魔しました。
また素敵な写真を見せてください。宜しく！

to gennpati さん
また復活してはいかがでしょうか。
家族でハイキングもいいですよね。
八ヶ岳はアプローチも便利で景色もいいですよね。
by 山子路爺 (2011-09-11 23:36) 

おはようございます
なんて素晴らしい景色でしょう♪
こんなに素敵な景色を一人じめですか～
なんとも羨ましいです☆

山は天気が急変するのですね。
女心のようです（笑）
by スマイル (2011-09-12 07:34) 

to スマイル さん
寒いので着られるものは全部着て吹きさらしの中にいました。
ご褒美ですかね。
さっきまで晴れていたのに、いきなり雷なんていう事も。
やっぱり女心？
by 山子路爺 (2011-09-12 14:03) 

レンズ雲（天候の悪化時にでます・・・）みたいですが、細糸のように稜線に靡く雲は幻想的ですね。　山から見る夕暮れの景色は、なんだかホッとしたり物悲しくなったり複雑な気持ちになります。　もう夜は寒い季節なのですねぇ・・・。
by おど (2011-09-12 22:03) 

to おど さん
はじめ糸のような雲が一本尾根を越えてきたかと思うと、数をだんだん増やしてついにはまとまった雲の帯になりました。とても面白い光景でした。
薄いレンズ雲がまるでコンタクトレンズのようでしたよ。

by 山子路爺 (2011-09-13 21:55) 

本当に糸みたいに流れてますね。
美しい！
by cjlewis (2011-09-14 16:39) 

to cjlewis さん
糸の様な雲の流れを見たのは、たぶん二度目です。
どちらの時も天気は悪くなりましたので、下り坂を告げる雲かもしれませんね。
でもきれいな流れでしたよ。
by 山子路爺 (2011-09-14 22:04) 

こんにちは。

高山の美しい風景ですが、不安を掻き立てる雰囲気が
伝わってきます。こういう景色に身をおくと自分の小ささを
いつも感じてしまいます。
by hiko (2011-09-15 05:49) 

綺麗な景色ですね。こういう景色を見に
たまには山小屋泊もやってみても良いかなぁ
なんて思います。
by ken_trekking (2011-09-15 07:34) 

先日赤岳展望荘に泊まった時は、アルコールが入って
夕日撮影どころではありませんでした。

女子と一緒に登るといかんですね！＾＾

by CARRERA (2011-09-15 22:23) 

to hiko さん
山に入ると、自然は偉大で人間はちっぽけって本当に感じますね。
「狭い日本」言いつつも知らない所が沢山あって、行きたいところも沢山あって、到底全部は行けませんものね。

to ken_trekking さん
私の場合には「山小屋」が結構重要です。
小屋番も、優しい人こわい人無口な人気の合う人会わない人……いろいろ居てそれも楽しむようにしています。
同宿する人も色々で、こちらも面白いです。

to GARRERA さん
赤岳頂上での記念写真見ましたよぉ。
女性－しかも若い－とご一緒、羨ましいですねぇ～。
そりゃ夕陽よりずっとずっと……。
by 山子路爺 (2011-09-15 23:34)