夏の終わり―南岳へ [北アルプス]
☆北穂高岳朝
常念山脈の先、雲海上に南アルプスや八ヶ岳そして富士山も浮かんでいた。
皆、小屋の横あるいは裏手の北峰に上がって、寒いと言いつつ日の出を待ったが、ちょうど昇ってくる所の雲が災いして少し残念な御来光だった。
諦めきれない数人を残して大半は暖かいご飯が待つ小屋に戻って行った。
朝食の後は、部屋に戻って薬を飲み、カメラのISOを確認し、トレッキングポールを仕舞い、小屋でもらったお湯をサイドにセットし、ヘルメットとハーネスと急降下に備えて膝サポーターを着用した。
そして靴ひもをギュッと締て気合いを入れた。
「行こう」
☆大キレット進入
小屋前の転げ落ちそうつづら折りの道から始まった。
小石を蹴るのも、蹴つまずくのも、ましてズルッと滑って転ぶなんてもってのほか、落石を誘発しかねない。
一歩一歩慎重に確実にくだり、それが終わるといよいよ核心部の始まり始まり。
十分に楽しみましょう大キレットを。
☆飛騨泣き
M君「H君得意の鎖だけど、一応ビレーしよう」
H君「OK。鎖が有れば全然大丈夫だけど、足が届かなくてズルッは怖いからお願いね」
私 「写真撮るからカッコ良くね」
2人「慎重にでしょ、まったく」
私 「……」
と言いつつ、スルスルっと下りて「OKよ」と声がかかる。
私、M君の順に下って……
M君「A沢のコルまで行って一服付けよう」
H君「乾燥レモン食べよう」
私 「チョコレート食べよう」
M君「相変わらず食べる事ばかりだねぇ」
さて、ピリッと集中して行きましょう。
☆A沢のコル
ザックを下ろして一息入れた。
空はいい具合に晴れ渡り、風もさわやかに流れ、緊張の冷や汗を飛ばす。
ザックに腰掛けて乾燥レモンを一つまみ放り込めば「スッパイ!」なんて口をとがらせ、「今日は今一の朝焼けだったね」なんて贅沢を言う。
岩の間から笠ヶ岳が、その向こうに名峰白山が遠く霞んで、3人「良いねぇ〜」を繰り返す。
プラボトルに貰って来たお湯が適度に冷め、それをゴクリと一吞みすれば休憩時間は終わり、いよいよ長谷川ピークに取りかかる。
さあ、お楽しみのナイフリッジ、集中集中!
☆長谷川ピーク
「あれれっ、Hピークって書いてあるテッペンで止まらないで行っちゃうの。写真撮ろうと思っていたのに」
私を無視してどんどん下って行く2人の後ろ姿を2枚だけ撮って、急いで……否、慎重に追いかける。
と、岩の上に何やらいただけない物が……「ウンチに気をつけて」……そう、猿の糞があちらこちらに。
この絶景を見ながらのキジ打ちはさぞかし気持ちが良いだろうけど(通れる岩は限られているのに、あえてそこを選んで……踏まない様に、手をかける所にも気をつけて)選りに選って大キレットのリッジ上にしなくてもいいと思うにだが……。
ウンチ地帯を通過して少し下ると、2人パーティそして単独行と続けてすれ違う。
さらに外国人男女パーティが……外国人とくれば決まり文句の
「Where from?」
「Czcho Ripublic」
「Oh! beautiful contry」
「Also this contry. Have you ever been to My contory?」
「No only by photo. I want to go but no money no time」
「Huhuhu……△◯* far」←たぶん「とても遠いからね」と言ったんだと思う
「Be careful」 「Thank you. Good luck」 「You too」
で……30秒足らずの国際交流を終え歩き出す。
☆南岳へ
キレットの底で一息入れた。
見上げる南岳(頂上は見えないんだけど)は岩に鎧われ遠くから見るなだらかな山容とは大違い 。
梯子登って、鎖伝って、岩を這って、2本の足で歩ける所まで、ヒーヒーフーフー。
小屋の少し手前で登山道を修復している人達がいて、草臥れた顔を見せるのが何となく悪い気がして、和やかな顔を作って「今日はぁ〜。ありがとう御座いまぁ〜す」と挨拶し、少しそのまま歩いてから眉間にしわ寄せてフーフー肩で息して前のを行く2人を追った。
もうすぐ小屋に着く、そこでカレーを食べよう。
2014年9月 北穂高岳〜槍ヶ岳
***実のところ、私は英会話などほとんど出来ないのであります。知っている、それも数少ない単語を並べて話しかけている訳ですが、相手の言っている事の10%程も理解出来ていないですし、自分の言いたい事のほとんどは表現出来ていません。そう言う訳ですから「山子路爺は英語がペラペラ」だなんて呉々も誤解無き様にお願いいたします。繰り返します「山子路爺は英語が出来ません!」***
ココ私にはどうやっても楽しめそうにはありません・・・
爺さま、手術されて心臓の毛が増えたんじゃありません?
分けてもらえばキレキレの岩場、少しは怖くなくなるかしら ^^;
by よしころん (2014-09-30 22:30)
素敵な景色に国際交流…
素晴らしいですねぇ♪
でも写真のような危険なところを行かないとダメなんですね(^_^;)
行ってみたいけど怖い、怖いけど行ってみたい(笑)
by werewolf (2014-09-30 23:52)
いつもながら・・素晴らしい写真!
山の空はきれいやね。^^
英語はあかんのん?
大阪弁は・・わかるかな?(笑)
by hatumi30331 (2014-10-01 00:24)
素晴らしい写真ありがとうございます!
by bpd1teikichi_satoh (2014-10-01 01:49)
思い出します^^
此処・・・・・
北岳からのるーとは登りが楽な気がしてみていました。
さすが高度感がありますよねぇ。
英語もばっちりでこれがまたすごい!
小屋でのカレーが美味しそう。
また行きたくなりました。
次回が楽しみ!!
by ひろたん (2014-10-01 06:37)
おはようございます。
高山での日の出は素晴らしいですね^^。
岩場の写真を見ているだけで身がすくむ思いです^^。
by 海を渡る (2014-10-01 09:58)
ここは素人がでを出せる場所ではありませんね。
わたしは、山子爺路さんの写真を拝見するだけで大満足です。
by ナツパパ (2014-10-01 10:07)
私も昔、このキレットを南岳から渡ったことがあります
北穂の登りがいやにきつかったのを覚えています。
今回は逆コースで行かれたのですね
わたしも、いつかこのコースで行きたいと思いつつ、年々気力は衰えるばかり…
今回は写真で楽しませてもらいます
それにしても、北穂から見る槍(特に朝夕の)はフォトジェニックですね
もう一度、北穂小屋だけでも行ってみるかな~
by asa (2014-10-01 10:35)
to よしころん さん
心臓の壁を焼いたらなんだか心肺機能が少しだけ良くなったようで……
でも、相変わらずバテバテですけどね。
to werewolf さん
デタラメ会話でコンニチハ。
無言ですれ違うのも、何ですから一言二言だけでも……日本の印象が悪くならなきゃ良いですけどね。
to hatumi30331 さん
英語ダメダメです。
大阪弁は大丈夫。阿倍野区在住の大阪っ子としょっちゅう電話で話しますので。でも喋るのはほとんど彼の方ですけど。
to bqd1teikichi さん
どうもありがとう御座います。
息が切れたり手が震えたりで、なかなか思う様には……。
to ひろたん さん
どちらから行っても、最後の登り300mは爺いにはキツイですね。
あんなにバテているのに、また行きたいと思うのは何故でしょうね。
英語は全然ダメなんです……誤解無き様お願いします。
to 海を渡る さん
もう少しスッキリした御来光を……イヤイヤそれは高望みですよね。
写真は少し強調され過ぎです。広角系しか持って行かなかったので……持っていてもこの場所では交換出来ないですけど。
to ナツパパ さん
高所……の方は進入禁止ですよぉ〜〜〜。
次回はもう少し考えながら撮りたいです。が、岩にしがみついて同じ絵になるかもしれませんが。
by 山子路爺 (2014-10-01 10:43)
to asa さん
北穂高岳小屋は、いままで泊まった小屋の中でベスト1or2の小屋です。
立地もさることながら、人も良く、大きな小屋では無い所がまた良いです。ここからのキレット越しの槍ヶ岳が良いですよね。前回泊まった時には、連泊して写真を撮っている人もいました。復調なった時には是非訪れて下さい。そして素晴らしい写真を見せて下さい。
by 山子路爺 (2014-10-01 11:01)
一枚目すっごい光景!雲と光や奥行き広さがー
言葉がわからなくても知ってる単語を使って
話しかけてあげるのが外国の人にもうれしいと思うます
自分が外国行ったときに現地の人が
カタコトの日本語で話しかけてくれるだけでテンションがるですよー♪
だからとてもステキなことです♪(・∀・`)
by ふゆん (2014-10-01 20:44)
さすがですね。
すごい。素晴らしい。そしてよくカメラで
撮影されてますね・・。
by zak (2014-10-01 23:25)
天気も良く、こういう岩場を、軽快に登っていくのは、楽しいでしょうね。
このルートは、私には怖そうですね。
by テリー (2014-10-02 23:07)
あいかわらず素晴らしい写真ですね。私も冒頭なような写真を撮れるようになりたいものですが、そのためにはテクニックの勉強が必要ですね。「山と渓谷」の入選作の写真の解説もこれからは読もうかなぁ…
それにこれほどの難コースなのに余裕たっぷりで…凄いです。
英語ができないとご謙遜されてますが、こちらから話しかけるだけでも尊敬です。私が外人がいるだけで、恥ずかしながら目を合わせようとしません。何か尋ねられたら困るので…情けない。
by makiwarikun (2014-10-03 09:20)
1枚目の写真にホ~ッとなり、2枚目でゾクゾクッ(◎_◎;)
無理っ!爺様の写真でもういっぱいいっぱいです!!
by hidamari (2014-10-03 10:26)
心臓の毛は生まれつきのものでしょう。(笑)
余裕で写真まで撮るのですから。
見ている方がハラハラします。
by nousagi (2014-10-03 17:46)
素晴らしい天候の中での大キレット通過ですね。
南岳から、大キレットと北穂高岳を眺めながら、ヘルメットを被って、気合を入れて大キレットに下って行くグループを羨ましく見ていたことがあります。
中高年から始めた俄か山歩きにはとても行ける所ではありませんので、素晴らしい写真とともに緊張感を持って記事を拝見致しました。
by ヴェール (2014-10-03 23:27)
to ふゆん さん
もし私のブロークン英語で話しかけられた事が、外国から来た人たちに何等かの好印象をもって受け入れられたとしたなら、とてもうれしいことです。
北穂高小屋に3泊くらいすれば、良い朝陽夕日が撮れるかもしれませんが……
to zak さん
最近は山歩きが主なのか、カメラが主なのか……少し前までは勿論山歩きでしたが、なんだか逆転してきたような……。一眼レフを持ち歩くのが億劫になるまで、このスタイルで行きたいと思います。
to テリー さん
天気が良いから行けるのかも。
雨だったら北穂高小屋で沈殿でしょうね。雨の中南陵を下るのも何だしね。
to makiwarikun さん
英語は本当に出来ないんですよ。でも爺ぃのくそ度胸で「Ha~~i」なんて言っちゃうんですよね。相手にまくしたてられると「?????」となるんですが。
to hidamari さん
今後しばらく、岩っぽい写真は無いですのでご安心を。
そろそろ雪の季節ですが、1度か2度雪の上を歩けたらなぁと思っています。
to nousagi さん
いやいや、きわめて小心者です。
ワイドめのレンズですので遠近感が強調されています。本当は大したことが無いのかもよぉ~~~。
to ヴェール さん
今回、大変お天気に恵まれました。北穂高岳から槍ヶ岳まで時々冷たい風が吹くものの、展望も良く快適に縦走できました。槍の穂先でちょっとガスったのは御愛嬌と云う所です。
by 山子路爺 (2014-10-04 00:38)