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バス800km―徒歩28km―レンタカー20km―飛行機440kmの旅 [近畿]

☆小口自然の家宿泊……完全貸切

私たちのためだけに沸かしてくれたお風呂にどっぷり浸かって……申し訳ないと思いつつ、でもやっぱり 「キモチイイ!」

元中学校だった宿泊施設……いつも泊まる山小屋よりは何倍も快適。

「お風呂は何回でもどうぞ。ぬるかったら蛇口を開けて下さい。熱いお湯が出ますから」

お言葉に甘えて寝る前に一風呂……夜行バスでの寝不足と心地良い疲れとお風呂の温々で……zzzzz。

 

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                            息を切らして登ったが日の出には間に合わなかった



☆小雲取越―これも貸切

請川12時27分のバスに間に合うように、朝食をおむすび弁当にしてもらい、まだ暗い空を見ながら宿を後にした。

トンネルをくぐって ⦅後でわかった事だが、古道はトンネルの上を通っていた⦆ 小和瀬橋を渡ると道は民家の庭先を通るようになる。

昨日も長い石畳を下って小口に出る直前は、民家の横を通るような道……「こんにちは」とあいさつしたり、分かれ道で迷っていると行くべき道を指差してくれたり……、こんな事も古道歩きの魅力かも。

だが、今朝はまだ家々に人の動く気配はなく、あちこちから犬たちの私たちよそ者を警戒する様な声だけが響いていた。

背中の山並みにお日様が顔を出しかけて、私は見通しの良い所までと急いではみたものの間に合わず、くたびれてテルモスのお湯を口にして、もう少し早く出るのだったと少し後悔した。

木々の間からスカイラインを離れて行く太陽を眺め、いつ見ても一日の始まりは良いものだ。

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                         木々の間からこれから行く道、辿ってきた道に光が注ぐ



手入れの行き届いた、これぞ美林と云う森の中を、上ったり下ったりしながら 「百閒ぐら」 という見晴らしの良い所に出た。

ここまで来れば残すところあと僅か、昨日痛めた膝も何とか持つだろう。

お地蔵さんの横に陣取って、おむすびの残り半分を食べた。

今朝早くに握ってくれたおむすびには、オジサンの優しさが詰まっていて、殊の外美味しかった。

おかずのウィンナー ⦅鮭アレルギーの私のためにウィンナーを入れてくれた⦆ を頬張りながら 「オジサンの写真を撮ってくれば良かった」 と思ったが、後の祭りだ。

いやはや今回は後悔ばかりだ。

あまりノンビリしすぎて請川でバスに乗り遅れては大変……もう一度気合を入れてザックを背負った。

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                               予定のバスに間に合いました、お疲れさん



最後はやはり民家の間を通って下地橋バス停に……そこから僅かに本宮大社方面に歩けば小雲取越のゴール請川バス停だ。

ザックを放り投げるように下ろしてそれに腰かけ、靴ひもを緩め膝サポーターを外した。

この解放感……キモチイイィ~~~。 

ごくごくと喉を鳴らして水を飲み、フゥ~~~。

落ち着いたところであたりを見れば、道路のむこうに薄皮まんじゅうの旗、こちら側には自家製豆大福のポップ……さてどちらにしたものかと迷った末に……道路を横断するのが面倒で豆大福に軍配を上げる。

美味い!大福で正解……いや、薄皮まんじゅうもきっと美味いはずだ……一応書いておかねば。

大福を食べながら待つこと暫し、やってきた「特急白浜温泉行」に乗客は一人……その一人も本宮大社で下車してしまい、結局貸切バスと……初めの頃は観光案内の放送があったが、私たちが夢心地になるとそれもストップ……気が付けば白浜駅……嗚呼よく寝た。

無料シャトルバスに乗り換えて、予約した宿へ……さあ~温泉の後はクエを食うぞぉ~~~。


                                               2014年1月 熊野古道にて


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バス800km―徒歩28km―レンタカー20km―飛行機440kmの旅 [近畿]

☆大雲取越―ほとんど貸切

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                                 まずは青岸渡寺にお参り

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                                   船見峠で視界が開ける

 

道は青岸渡寺横の石段から始まった。

「小口までですか?気をつけて行きなさいね」 通りかかった僧侶に見送られて歩き出した。

寒いと思ってフリースを羽織っていたが、あまりの汗に早々に脱ぎ捨て、長袖のTシャツと半袖のラガーシャツの格好で歩いた。

木々の間を抜けてくる風が、火照った体を冷やし汗をとばす。

林が切れて まともに吹かれると 「おお寒い」 などと思わず声に出してしまうが、荷物を背負って歩くにはほどほどに良い風だ。

南紀はやはり温かい。

 

ひとしきり登った所に東屋がみえて、船見茶屋跡とあった。

眼下に那智湾を眺めながら、ブドウパンをかじってテルモスのお湯を飲み、遅い朝食をとった。

ここまで2時間弱……今日この道を小口に向かって歩いている人はずっと先に行ってしまったのだろうか、それとも私たちの後ろを歩いているのだろうか。

中間地点あたりで、小口から来る誰かとすれ違うのだろうか。

未だに人の気配が感じられず、古道は私たちのためだけにあるようだった。

 

 

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                             お地蔵様に手を合わせながら進む

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                                        熊野の美林に光があたる

 

角を曲がって人が来る。

若い女性、単独行、しかも外国人……

「KONITIWA!」

「こんにちは。Where are you from?」

「From California」

それからお互いに英語と日本語ちゃんぽんで……

How long stay in Japan?」

「Aaaa……ニイガツ……」

「2ヶゲツ、2months?」(外国人と話すと、日本語がカタカナ表記になってしまう)

「yes yes」

大阪→京都→奈良 と廻って、高野山から歩き出したらしい。

〇〇王子(泊)→〇〇王子(泊)……(かなり詳しい。全く詳しくない私は、yayaと適当に相づちを打つ)……湯の峰温泉(泊)→本宮大社→(小雲取越)→小口(泊)と歩いて、今日 大雲取越を走破して那智勝浦に宿泊予定。

「Snow in Koyasan?」と聞くと、やおらポケットからコンデジを取り出し、「made in Taiwan」などといいながらカチャカチャやりだし、画像を見せてくれる。

よほど感動したらしく「ほらほら」とページをめくる。

確かにお堂の横に雪が白く写っている。


私は「Oh Oh!」などと相変わらず適当な相づちをうっているものの、ビュー画面が小さくてよく分からないのでなんとコメントしたものやら……。

まだ話したりない様子だったが、日が暮れないうちにお互いの目的地に着かなければならないので、お別れする事にした。

Have a good day」と私たちは坂道を下りだす。

You too」と彼女は坂道を登りだす。

10分足らずの小さな国際交流だった。

少し歩いてから……

彼女の写真を撮ればとか、チョコレートの一つも上げればとか、東京に来ることがあれば私たち夫婦とディナーでもいかがと言ってみるとか……もう声が届かない距離になってから思うなんて……いつもの様にドジな私だった。



                                          

                              2014年1月 熊野古道大雲取越にて



☆こんな人里はなれた山道を、若い女性の一人旅。安全だといわれている日本だが、もし私が彼女の親なら心配で眠れないかも。日本っていい国だなぁと思うと同時に、2ヵ月後無事に良き日本の思い出をCaliforniaに持ち帰って欲しいと祈らずにはいられない。そしてこの「安全な日本」を決して壊してはいけないと改めて思う大雲取越だった。


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バス800km―徒歩28km―レンタカー20km―飛行機440kmの旅 [近畿]

バスはひた走る。

目は閉じているものの、頭は冴えている。

窓から冷気が忍び寄る。

もぞもぞと体を動かしなんとか眠ろうとする。 

浅い眠りと覚醒が交互にやって来る。

その度にカーテンを少しだけめくって流れる光を覗き見る。

 サービスエリアに滑り込む。

 外に出て固まった体をのばす。 

もう寝るのは諦めようと思ったとたん、不思議な事に眠気が襲って来た。  

 

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                                やみくもにシャッターを切った

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                              角を曲がってバスのスピードが落ちた

 

 「尾鷲」のアナウンスで目が覚める。

東の空に赤みがさして、もう少しで夜が明ける。

水平線に昇る朝日を撮ろうと、ガラスにレンズをつける。

バスのスピードが上がってシャッターが遅れる。

民家や林が太陽を隠す。

「林の中に海へまっすぐのびる小道、その先に朝陽が」……そんな光景が何度かあったが、無輪撮れる訳が無い。

そうしている内に、太陽は水平線を離れて、眩しさが辺り一面に散らばる。

もうすぐ新宮、終点の那智勝浦が近づいた。

 

 

                                             2014年1月 熊野古道歩き

 


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バス800km―徒歩28km―レンタカー20km―飛行機440kmの旅 [近畿]

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                                       迷いながらもYCATに

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                            三重交通と西武バスとの共同運行便 この日は西武バスの担当

 

旅はYCATから始まった。

定刻通りに22時45分発車……観光バス特有の柔らかいサス……深いリクライニング……靴を脱いでフットレストに足を置く……暖房が効きすぎかな……ダウンジャケットを脱いで目をつぶる……なかなか快適のようで、ゆっくり寝られそうだ。

首都高に乗りスピードが上がる……んっ、寒い、体の左側が寒い……右は快適なのに、左は異常に寒い……ダウンを着ると、右が暑い……。

備え付けのブランケットを左足にまいて、ダウンに左腕だけ通して、あまりは丸めて断熱材代わりに……どうもシックリこない……自分に許されたスペースのなかでベストポジションを見つけようとゴソゴソ動く。

勝浦温泉まであと9時間……他の人の寝息が聞こえて……何とか寝なければと思いつつ……焦れば焦るほど寝付けない。

こりゃ、明日はバテるかな。 

 

 

                                         2014年1月 熊野古道歩き

 

 


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マイルが消滅する前に―熊野古道さわり [近畿]

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薄暗い森から明るい茶畑に変わると、そこに石に腰掛けた老人がいた。

「こんにちは」

「何処から?」

「東京です。おじさんは?」

「ずっと下の方に熊野川が見えるだろう。ワシャそこから来た。暇だから毎日登って来るんだ。」

それからおじさんの話が始まった。

先年の台風に事、朝の連続ドラマのロケ地だった事、林業は難しい事、この辺りは暖かいのであまり雪は降らない事、……30分以上経って

「そろそろ帰ります」と歩き出すと、まだ話足りないのか一緒に付いて来た。

「反対方向じゃないの?」

「この先の分かれ道からも帰れるから」と言ってまた話し出した。

いよいよ分岐点に来て

「ありがとう、楽しかった」と言うと、ニコニコ顔で「気ぃ付けて帰りぃ」と言い残し、すたすた歩いて林の中に消えていった。

帰りの私達の足取りは、ホッコリ気分ですこぶる軽かった。

 

                                          2013年1月 熊野本宮大社

 

 

 

 


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マイルが消滅する前に―熊野本宮大社 [近畿]

7_DSC4959.jpg      3月のヨルダン戦勝利を八咫烏に願う

7_DSC4952.jpg    手振れピンボケで失礼します……トリミングじゃなぁ、マクロレンズがほしいなぁ

 

学生時代、所属の部活で年に一度里道を歩くイベントがあり、一年生の時は南紀だった。

記憶は定かではないが、出発地は伊賀だったと思う。

そこから柳生~奈良~天理~桜井~飛鳥~吉野~大台ケ原と辿って那智勝浦で解散というコースだった様に記憶しているが、大台ケ原から那智勝浦まで何処を歩いたのか全く覚えていない。

なにせ荷物が重く(30㎏位かな、それでも途中で食料を調達出来るので山行よりは軽かったかけれど)地べたばかり見て歩いていた。

断片的に覚えているのは、桜井で小さな神社のお堂に泊めてもらったこと、飛鳥の石舞台の上に並んで記念写真を撮った事、大台ケ原の大蛇嵓で谷底の眺めがすこぶる良かった事、那智勝浦に着いた時には疲労困憊で浜辺にひっくりかえっていた事くらいかな。

……

その時はに寄らなかった熊野本宮大社に今回遅い初詣に。

一通りお参りをした後は、現在地に移転する前の旧社地 大斎原(これがなかなか読めなかった)へ。

とても静かで、なんだか本当に神様がいるかもしれないと思わせるような場所だった。

誰もいなかったからかな。

……

さて、昼ご飯を食べたら、熊野古道とやらを少しだけ歩いてみるか。

 

                                             2012年1月 熊野本宮大社

 

 

 


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マイルが消滅する前に [近畿]

7_DSC4931.jpg   この翼、高度を下げていくと「しなる」というか「震える」というか……

 

雪が降るかもしれない曇り空の羽田空港午前7時35分、定刻どおりに飛び立ったJAL 1381便、厚い雲を突っ切って上昇中、窓の外にふわりとゆれるのは雪だろうか。

約9000mまで上昇してしまえば上空青空気分爽快……ことりとも揺れずに雲の上を滑って行く。

しばらくウトウトすると……「下降します」「着陸態勢に入ります」……もう下りるのぉ、なんだかあっけない。

午前8時50分南紀白浜、さすがに暖かジャンパー脱ごかぁ。

 

 

                  2012年1月 末日で消えてしまうマイルを使って熊野本宮大社に初詣

 

 


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