谷川岳肩の小屋―諌 [奥利根/北関東]
あの時もこの鐘はあったのだろうか……
あの時…冬季開放部の扉を開けて中に入ると三人の先客が火にあったていた。
一人がチラリとこちらを見て「どうぞ」と火のそばにまねいてくれた。
霧の中を来た私はしっとり濡れていて、チョロチョロと燃える炎がありがたかった。
彼「どこから?」 私「西黒から」
彼「怖い所なかった?」 私「一箇所、トレースがマチガ沢よりに回り込んでいて…」
彼「ああ、無事で何より。どこを下る?」 私「天神を」
彼はコクリとうなずき私との会話はそこで途切れた。
彼には、山の経験も浅く、技術も見識も無い未熟者が、アイゼンも着けずもちろんピッケルも持たずに、春とはいえ雪に覆われた西黒尾根を登って来るとは馬鹿者以外の何者でもないと見えたのに違いない。
彼らの話題はほとんど谷川岳東面のことだった。それを聞きながら、先ほどの会話の中に無謀な私に対する「諌」を感じていた。
少し遅れて最後に外に出ると、三人の姿はすでに無く、どこに向かったのかは分からなかった。
六月初旬の重い空からついに雨が落ちてきたが、気持は驚くほど軽く、安物の登山靴は天神尾根へのトレースを拾っていた。
2009-10-05 13:30
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コメント(6)
どんな音がなる鐘なんだろう…と想像してみました^^
by Reny (2009-10-06 10:08)
to Renyさん
コメント有り難うございます。
さてどんな音なんでしょう、鳴らしたことが無いのです。
道に迷った人に希望を与える鐘ですので、きっと明るい音色では。
今度鳴らしてみます。
by 山子路爺 (2009-10-06 17:12)
ご訪問 & nice ! & コメント ありがとうございました。
今後とも宜しく、お願い致します。
by ビアンカ (2009-10-07 18:52)
to ビアンカさん
コメント有り難うございます。
こちらこそ宜しくお願いいたします。
by 山子路爺 (2009-10-07 21:35)
富士山に登った時に、確かに思いました。
慣れた方は装備もきちんとしてるって。
慣れてないおいらのような人間は、それこそ装備くらいは
きちんとしておかないといけませんよね。
by werewolf (2009-10-08 23:01)
to werewolfさん
コメント有り難うございます。
そうですネ、イザッという時に違いますね。
もちろんイザッとならない事が一番ですが……
by 山子路爺 (2009-10-09 14:56)