台風一過……キレット小屋 日の入り月の入り [北アルプス]
キレット小屋が見えた、それも僅か100m程前方に。
口沢のコルからは、いやそこまでも、「あの小尾根を回り込んだら」とか「このピークを越えたら」とか「そのコルの先には」とか独り言を呟き、アップダウンを繰り返し、真夏を思わせる日差しに辟易し、ボトルの底に僅かに残った水を舐め、それでもほぼ時間通りに現れた小屋を見て歓声を上げた。
小屋前にはテーブルとベンチ、そしてそこには今朝唐松小屋を先発した単独行のオジサンがいて、手を振って出迎えてくれた。
ザックを下ろして、宿帳書く前に、普段は飲まないビールを一本、プファァ~~ッフゥゥ。
ガスが上がって来た。
黒部の谷や沢はすでに雲海で埋め尽くされ、剱岳のずっと北の毛勝辺りの山々は全く海に浮かぶ島のようだった。
キレット小屋のすぐ下の沢も雲に覆われ、そこからフワァ~フワァ~と薄いガスが舞い上がる。
それでも太陽はしっかりと輪郭を保ったまま北方稜線に、ゆっくりとその姿を隠そうとしている。
「ここにきてガスが上がるなんて惜しいなぁ」とう言う声がそこここから聞こえたが、これはこれで良いと私は思った。
明朝目覚めの頃には、満月に近い月が剱岳付近に沈む。
それを撮れればいいのだがと思いながら、冷え切った体を布団にもぐり込ませた。
喉が渇いて目を覚ます。
まだ消灯前だ。
自炊室でコーヒーを沸かす。
「一杯如何」 と食事の後片付けをしていた青年に声をかける。
日芸写真科だという彼と、山話、コーヒー話、そしてもちろん写真話で盛り上がる。
別れ際に……
「お団子とあんこを持ってきたんですよ。明日は中秋の名月だから」
「じゃぁ、種池でお月見しようよ」
「残念ながら、僕は冷池でテントです。冷池の方が眺めが良さそうなので。明日は写真を撮りながらゆっくり行きます」
…………
…………
翌朝日の出前、満月一日前の月が剱岳に沈んで行った。
2013年9月 キレット小屋にて
年寄りの与太話に長時間付き合ってくれた日芸写真科の彼……とても楽しかったよぉ~~~。
鹿島槍ヶ岳で 「一枚とってください」 と言われて、君のオリンパスのシャッターを押したけど、岩場を登ってきた爺さんの手は震えていたのでブレた写真になったかもしれない。
その辺りの事は何卒ご容赦の程を。それではまたどこかでね。
いよいよ鹿島槍ですか。
天気は良かったのかな…。
by asa (2013-10-10 08:05)
沈む太陽・・・映画みたいです!
月も・・・・満月の近く前後はすごく輝くんですよね〜♪^^
文章も気持ちよくて・・・・
素敵ですね。^^
ちょっと褒め過ぎたかなあ?へへ;
でも決してウソではありません!(笑)
by hatumi30331 (2013-10-10 12:24)
キレット小屋泊まりを存分に楽しまれましたね。 いいなあ~
by Jetstream777 (2013-10-10 13:19)
次が楽しみです。
by ゆうくん (2013-10-10 20:24)
山に登って見る月も、
下界から見るのとちょっと違うかも♪
でも月が出てないほうが星は綺麗なんだよなぁ♪
by werewolf (2013-10-10 22:55)
山の夕日とお月様!素晴らしいですね☆
あっ!アイコン変えました(^^)
これからもよろしくお願いします~♪
by hide (2013-10-10 23:06)
to asa さん
一本調子の登りを登って鹿島槍ヶ岳です。
お天気は最後まで……ピーカンでした。
to hatumi30331 さん
月の写真も難しいです。コントラストが強すぎで。
アッ、褒めすぎのお言葉ありがとう御座いました。
また褒められるように頑張ります。
ro Jetstream777 さん
ずいぶん前らしいですが、皇太子殿下がいらっしゃった時に建て替えたらしいです。落ち着いた良い小屋でした。床が「ギシッ」と云うところがありましたが、これは御愛嬌と云う事で。厳しい環境なので痛みも早いかもね。
to ゆうくん さん
次はカシマヤリィ~カシマヤリです。登る方は足元にお気をつけて…なんてね。
後立山の盟主(私が勝手に言ってるんですが)ですぅ~~~。
to werewolf さん
そうなんだよねぇ~。
わりあいに月が明るい日に山登りすることが多いみたい。
今度は星降る写真を……難しいかな。
to hide さん
気分転換に変えてみました。なかなか適当なのが無くってね。
今回の山では、日の出日の入り、月の出月の入りがバッチリでした。
by 山子路爺 (2013-10-10 23:45)
キレット小屋、いいですね。
最近、昔の日地出版の黒部・白馬・立山の地図が出てきて、1969.8.13-8.18 の日付で、白馬ー唐松ー五竜ー鹿島槍ー針ノ木の縦走が赤インクで、記されているのを見つけました。学生時代に、山に興味をもって、縦走しようとしていたのですが、台風一過のすばらしい天気を狙って行きましたが、台風の被害もあって、山小屋で、水がもらえないことが判り、五竜岳で、縦走を断念して下りて来ました。今の年令では、唐松ー五竜までは、いけても、キレット小屋は、ちょっとハードルが高そうです。
by テリー (2013-10-11 10:58)
日芸写真家の青年との出会い、いいですね。
関係ないですが、僕は日芸映画科です。
by cafelamama (2013-10-11 19:47)
お団子とあんこを持っていたのは
山子路爺さんではなくて、青年のほうなんですね。
風流で屈託ない感じの好青年だったように想像しました。(^^)
いい時間を過ごされましたね。
by nousagi (2013-10-12 10:45)
キレット小屋イイですね~
12時頃に着いて雨風が強かったのでよっぽど泊まろうかと思ったけど
意を決して冷池まで進みました。
単独だと他の登山者との話が楽しいですよ
この青年も楽しかったハズです。
by CARRERA (2013-10-12 11:43)
山子路爺さん、こんにちは(^^)
わたしたちの夏の唐松岳は、神秘の霧のベールに全てを包み込み、
とうとう夕景も朝焼けも、何も見せてはくれませんでした。
でも、午後2時頃までと、翌日9時頃には再び快晴となりました。
ただ、剱岳が見えなかったのが心残りでした。だから、また、行く事にしました。
剱岳に登る朝日と沈む月、素晴らしいですね!!
そして、山での出会いと別れも素敵です。山子路爺さんの散文詩のような文章に魅かれます。
先日、若草女子会で、憧れだった会津駒ケ岳に連れて行っていただき、大感激しました。
その時、わたしたちの話題は山子路爺さんの事でしたよ。くしゃみしませんでしたか~?(笑)
by sizuku (2013-10-12 17:06)
to テリー さん
白馬~針ノ木…細切れなしの後立縦走…やりたいですね。今の私では6日で行けないかもしれませんね。私も年々体力も平衡感覚も衰えて、とにかく早いうちに3キレットを行っておこうと思い、この度最後に残った八峰に行きました。まだ自分では若いつもりでも、はたから見ると危なっかいかもしれませんね。
to cafelamama さん
日芸でしたか。どうりでcafelamamaさんのブログは雰囲気がいいなぁっと思っていました。ここの所ほとんど映画を観ていません。最後に観たのは「羊たちの沈黙」の2作目(どれが2作目か紛らわしいのですが)だったと思います。大分前ですね。
to nousagi さん
そうなんです。お月見まではねぇ~、全然思いつきませんでした。
雲の無い空にくっきり満月が……団子はありませんでしたが、種池山荘で楽しみました。彼はどうしたかなぁ。
to CARRERA さん
12時ごろキレット小屋着は相当早いですね。しかも雨だったようで。
私は単独行と云う事ははほとんどないですが、他の方々とのおしゃべりは山の楽しみの一つです。
to suzuku さん
八方尾根を登りきり小屋の横に出る。この時、剱岳の出迎えを受けるのを毎回楽しみに登っています。天気が良かった時もそうでなかった時も色々ですが、それなりに楽しんでいます。ぜひ又トライしてください。
女子会で話題に上る……ありえないことですよ。くしゃみ???う~む。
会津駒にはそのうちお邪魔しなければなりませんね。
by 山子路爺 (2013-10-12 23:00)
to hide さん
アイコンの件……hideさんのアイコンだったんですね。自分のだと思ってコメントが変でした。スイマセン。
このPCではまだ替わっていないんですよ。仕事場ののはすでにOKなんですが。
まぁ、そのうちに替わるでしょう。
by 山子路爺 (2013-10-12 23:50)