アルプス銀座表裏5 [北アルプス]
☆裏銀座ー三俣山荘〜水晶岳
山の朝は早い。
通常、日の出前の真っ暗い内からゴソゴソやりだす。5時頃「ご飯です」の声がかからる頃には全ての準備を整えて、食べたら速やかに出発して行く。さらに朝食を弁当にしてもらって、みんなが朝食を食べている頃には最初のピークに立っている人もいる。昨夜水晶岳に登ってから引き返して太郎小屋に行く予定の夫婦もそんな早出組で、4時半ごろ外の様子を見に行った時には彼らの居たスペースの布団がきちんと畳まれていた。彼らは今頃、ワリモ岳も超えているかもしれないし、さらにその先かもしれない。鷲羽池へ行ってみると言ってたが、果たして池まで下ったんだろうか、彼らならやりかねないかもしれない。
そんな事を考えながら、私は再度布団に潜り込んでうつらうつらして朝食のコールを待った。
今日の行程は短い、一応休息日だから。
短いが小屋を出るとすぐ鷲羽岳へ標高差400m約1時間半の登りだ。
伊藤新道分岐(多分今は廃道……最近の記録を読んだが素人がやれるルートではない、ヤバすぎる)をすぎていよいよ登りが本格化。前を行く人との差は縮まらないが、後ろから来る人はどんどん迫ってくる……遂に若いカップルに追いつかれて……
「おはようございます。ゆっくり行きますのでお先にどうぞ」
「それでは頂上で待っています」
「大丈夫、あなた方が頂上を出発するまで私たちは着きませんから」
待っててくれる事は無いだろうと思うけど、それならばと少しだけ頑張ってみた……結果は……
ふぅ~~~着いた。
2924.4m鷲羽岳、眼下に鷲羽池、雲海の上に槍穂高や一昨日の出発点大天井岳がまるで海に浮かぶ大型船のようにプカリプカリ。
先ほどの若いカップルに……
「2人並んでる写真撮りましょうか」と話しかけシャッターを押す。
「お二人の写真も撮りましょう」と言われて……
殆どの登山者は絶景をバック(特に著名な頂上では)記念写真に納まるものだが、私たちにはそうした写真がほとんど無い。それは写されるのがあまり好きでないからなのだ。でもこの時は言われるままに首にかけたカメラを渡し、槍を背にしてポーズをとった。たぶん「頂上で待っています」の言葉に彼らの優しさが感じられたからかもしれない。
「ウワァ~カメラ凄い、重い、落としたら大変だからストラップ首に掛けて、いきます、おおぉ、もろに逆光だけどいいですか?ではチーズ!もう一枚ハイポーズッ」
「ハイポーズ」と言われて無意識にキツネサインを……。
「あれっ、それは……」
「ハイ、あれデスッ。こんどSSAで2日間暴れてくる予定デスッ。」
「オジサン、わかぁ~い!」
「えへへ」ちょっと照れ笑い。
若いカップルさんありがとう御座いました、楽しいひと時でした。
ワリモ分岐を過ぎた時、前方から例の若い夫婦があっという間に近づいてきて……
旦那「あまりの天気に水晶で随分過ごしちゃった」
奥方「もう去りたくなぁ~いって云う感じで、写真バシャバシャ撮ってました」
旦那「オジサンたちも早いですねぇ~」
私達「御冗談を。でっ、太郎まで?」
旦那「出来れば薬師の小屋まで。明後日折立からの東京までのバスの切符買ってあるので」
私達「うへぇ~~~、薬師も登るんだう、うひょ~~~」
お互「それでは、何処かでまた、気を付けて」
彼等は風の様に去って行った。
水晶小屋で作戦会議……そんな大げさなものじゃないけど
とにかく今から水晶岳を往復しても、時間的には野口五郎小屋は問題なく行ける。
第一案:今日は野口五郎小屋まで足を延ばして、明日は烏帽子をピストンし烏帽子小屋に泊まらず高瀬ダムに下山。あまった1日で温泉宿に泊る。これはこれで魅力的だ。
第二案:今日は水晶小屋に泊まって半日のんびりと北アルプスを堪能し鋭気を養ったのち、明日は烏帽子小屋泊で明後日下山、もしくはまだ気力が残っていれば予備日を使って船窪経由し(船窪小屋はぜひ泊まってみたい小屋なのです)1日遅れで下山。これは最高に良い。
結局第二案に決定……宿帳記入後寝るスペース確保……ペットボトル1本だけの空身で水晶岳に向かう。
薬師方面に雲はあるもの見晴らしはすこぶる良好だ。ゆっくり歩いて50分程で2986mの頂上を踏んだ。
岩に腰かけてこれまでの行程に目をやり「よくあんな所から来たなぁ~」と感嘆し、これからの行程の野口五郎方面を眺めては「結構長い稜線だなぁ~」と少し不安にもなった。
さて、小屋に戻って少し遅い昼飯にしよう。
小屋の裏に小高い丘がある。
2万5千図には名前が書いていないがどうやら赤岳と言うらしい。
標高は2900m程もあり、他の山域ならば一角の山であっただろうが、北に水晶・南に鷲羽と云う北アルプスの名峰に挟まれて不運をかこっている。
今そこに立って日没を待っているのだが、黒部の源流方面の雲が厚く今日は感動的な夕日は無理なようだ。それなら上空のうろこの様な雲が紅に染まってくれたらなぁとだいぶ粘ってみたが、期待通りにはならず、寒さばかりがどんどん増して、小屋に戻らずにはいられなくなった。最後に、野口五郎に続く稜線から東沢谷へ滝のように滑り落ちる雲の写真を撮って今日の行動に終止符を打った。
2017年8月~9月 表銀座~裏銀座
アルプス銀座表裏4 [北アルプス]
☆裏銀座ー西鎌尾根下って三俣山荘へ
山荘は濃い霧に包まれていた。
昨夜密かに「晴れたら朝飯前に槍の穂先に」と願っいたが、期待は虚しく霧の彼方に沈んでしまった。
周りが少し騒々しくなって再び目を覚まし、「食事の用意ができました」アナウンスで布団から抜け出した。
外の景色は相変わらずで、霧が深く今にも降り出しそうだった。
今日もカッパ着用でのスタートとなりそうだ。
昨日同様雨合羽に身を包み、道標に従って西鎌尾根を下る。
しばらく下ると空は明るく、この分では雨にはならない気配が感じられた。
千丈乗沢越でカッパのズボンを脱ぎ、その先のお花畑で「降らない」と決めつけて上着も脱いで身軽になった。そうするうちにさらに明るさが増し、時には雲間から青空が覗いて北鎌独標が見えてきた。
ヨシヨシ!この分だともうすぐ槍の穂先も顔を出すだろう。
今のところ足取りも軽い。
槍ヶ岳山荘から硫黄乗越まで3時間強、少し疲れが出てきた……硫黄尾根の異様を楽しみながら休憩。
樅沢岳を、見えてきた槍ヶ岳に背中を押されてエッチラオッチラ登る。細長い頂上を過ぎれば双六小屋への200m程の下りだ。せっかく登ったのにと、ブツブツ言いながら着いた双六小屋でカレーライスを食べ、これから先の道を見上げて気持ちが萎える……双六岳まで結構な登りじゃないか。
計画は双六岳~三俣岳と稜線を行くつもりだったが……今、気持ちは巻道に傾いている……分岐点まで登って「今回は巻道」で意見が一致……が、三俣山荘に落ち着いてみると、やっぱり稜線を行けば良かったと少し後悔。
双六岳から見た槍ケ岳の写真が無いのが残念。
三俣山荘の夕食は鹿肉のシチュー
その食卓で……
テーブルに今日のメンバー6人がついて「いただきます」とともに食事が始まった。
単独のお兄さん・単独のお爺さん・30代の夫婦・爺さん夫婦の6人。
話のきっかけは大体「今日はどこから?明日は何方へ」から始まる。
30代夫:「どちらから?」
私 :「表銀座から」
30代夫:「同じコースだ」
私 :「大天井と槍に泊まって3日目です。表から裏で高瀬ダムに下山します。」
30代夫:「私たちは西岳泊まりで2日目です。水晶まで行って引き返してワリモ分岐から雲の平経由で太郎まで行けたらと思ってます。」
私 :「えっ、2日でここまで?水晶行って引き返すって何?それで太郎までいくの?」
そのやりとりを聞いていた単独兄さん……
単独兄 :「あんたらアルプス交通法違反だぁ。そっちの爺さん夫婦は違反切符だけだけど、こっちの若夫婦は逮捕だぁ〜。ねぇ、こっちの単独爺さん、そうでしょう。」
単独爺 :「………………」ニコニコ微笑んでいる。
単独兄 :「大体、歳なのに一気に表裏はないいでしょう。歳を考えなくっちゃ。まぁ、それはいいよ、だけど切符は切るよ。問題はそっちの若いの、中房温泉から2日でここまで来たの?そりゃ速度違反だよ。爺さん夫婦は免停で済むけど、そっちは逮捕だよ。明日水晶行ってから引き返して太郎まで?ダメだよ、途中で倒れても助けに行かないからね。捜査の人に『私は止めたんだよ』とは話すけどね。」
ここから単独兄さんの独壇場。話の引き出し方は上手いし、話も面白いし、テーブルは笑いの渦に。
食事も終わりに近づいて……
私 :「ところで、お兄さんは何処から?」
単独兄:「えっ、聞くの?聞く?聞くから言うけど笑うんじゃないよ。じゃあ言うけど、スゴロクから」
全員 :「えぇ〜〜〜〜〜〜ッ!」
彼のおかげで夕食のテーブルは大盛り上がりでした。
このお兄さん兵庫県三田市からの登山者で、彼の名誉の為に言っておきますが、かなり山に詳しいベテランさんでした。三田のお兄さんに感謝。
夕食後バーカウンターで、前半の無事に感謝と後半の健闘を誓い乾杯……ウィ〜ワインがしみるぅ〜〜〜!
2017年 8月〜9月 表銀座・裏銀座
アルプス銀座表裏3 [北アルプス]
☆表銀座ー東鎌尾根登る
雨がトタン屋根をパタパタ叩いき風もひゅーっと鳴いていた。
4時に起きて階下に下りると、昨夜北鎌をやると言っていた2人組が弁当を食べていた。
「予定通りですか」
「いや、この天気なので断念して東鎌から槍に行こうと思う」と答えていたのだが……。
身支度を整えて6時ごろ小屋番さんに見送られて雨の中にとびだした。
風はさほどのことはなく、降っている割には全体的に明るく、もしかしたら上がるのではないかと期待したくなるような空だった。
北鎌は断念したと言っていた彼ら、空模様を見て天井沢に下ったかもしれないなあと思いながら貧乏沢下降点を過ぎた。びっくり平を通り赤岩岳の登りにかかるころには雨が上がりガスが流れるようになり、時々それも切れて光が差し込むようになってきた。
シメシメ!西岳ヒュッテでカッパを脱ごう、そしてうどんとトマトをたのもう。
西岳から水俣乗越まで200mほど一気に下る、せっかく登ったのにと思いながら。
登ってくるツアー登山と思われるパーティとすれ違ったのだが、先頭のガイドさんとしんがりのツアーコディネエータ―(たぶん)以外は大体中高年の女性……女性は強い。まあ、それでも辛そうでしたけどね。もしもここを登るのなら、私もあんな顔しているんだろうなぁ~と思いながら見送った。(シャッター2回)
水俣乗越で「何年か前、北鎌尾根目指してここから天上沢への踏み跡をワクワクしながら辿ったよなぁ~」と思い出にふけりながら一休み。あの時は雨の中の核心部だったので、晴れた日にもう一度挑戦したいなぁ。
さあ行こう!槍まで標高差600m!痩せ尾根・岩尾根・ハシゴにクサリ何でもござれ。
と言ってたら、第一展望台過ぎれば早速のお出まし・垂直三段バシゴ、慎重に下り降り立った所が両側ガレ、その先岩場となってさらに登りの鉄バシゴ……こう云うのを繰り返し、第二展望台・第三展望台と過ぎても槍は見えず登りはまだまだ続く。
南側は晴れているのに北側はガスに包まれて、槍の穂先は勿論北鎌尾根も見えず、張り合いのない事この上ない。
こんな時頭の中は「ヒュッテ大槍で何か食おう」と、今回のテーマソング「一度ガチで決めたなら最後までやり抜くよ・諦めたらそこで負ける自分との勝負……」がグルグル回し。
ヒュッテ大槍でラーメン食べて自家製クッキー仕入れる。
通常ならばここに泊まりたいのだが(ヒュッテ大槍は2番目に好きな小屋なのです)明日のことを考えれば槍ヶ岳山荘まで足を延ばして今日中に槍に穂先に立っておかねば、後々辛い事になる。
腹ごしらえをして外に出ると、なんと北鎌尾根を従えて槍ケ岳が……「早く行って穂先に登ろう」って言ってもここから1時間弱かかるんだよなぁ~、それまでガスが掛からなければいいが……穂先まで標高差300m……頑張ろう。
しばらく登るとガスが上がってしまい未透視が悪くなる。
「行いが悪いから展望がなかったのよ」などという愚痴を言う声とともにガスの中から現れた顔見知りの人……「やあやあやあ」と立ち話。
友人:「山荘まで?私たちは大槍に荷物おいて槍ヶ岳ピストン。どこまで行く予定?えっ表から裏なの。やるねぇ~~。今、穂先の展望がなかったのは私の行いが悪いせいだって責められていたんだよ、良い所で会った、普段の行いは良いと説明してよ」
爺さん:「ハイ、本日の天候は雨男たる私のせいであります」と爺さん弁明に努めたわけですが、俺って雨男だったけ……???てなわけで4人で大笑いして別れたのだが、こんな所で友人に会うなんてこの後幸運が待っているかも。
相棒を小屋に残して穂先へ。
「どうぞお先に」ともたついていた若者パーティーに道を譲ってもらたのだが、急ぐと息が切れる切れる。譲ってもらった手前ゼェゼェハァハァしているところなんか見せられないので、チョットばかり格好をつけて登ったら最後のハシゴの下で息を整えなければならなかった。歳だなぁ~。
頂上は深い霧の中。登るには登ったが、展望はさっぱりで、乳白色が辺りを支配していた。
穂高どころか北鎌も眼下の槍ヶ岳山荘すらも見えず、祠の前で自撮り中の若者がやっと見える程度で、ハイ先ほどの友人の「普段の行いが悪い」という結論を肯定し、さっさと下りの梯子に取りついた。
まあ、一応槍の頂上は踏んだので良しとしよう。
2017年8月~9月 表銀座~裏銀座
アルプス銀座表裏2 [北アルプス]
☆合戦尾根登る
中房の広場に子供達の声が溢れていた。
学校登山、どうも私たちがこの時期に唐松岳や燕岳に来ると出くわしてしまう。子供達の声を聞いているとこちらも元気になれそうな気がするのだが、先に出発されると狭い登山道は大渋滞になってしまうので、急いで靴紐を締め直し彼らより先に出発した。
合戦尾根は出だしから急で、始めのうちはお喋りをしながら歩いているのだが、そのうちだんだん口数が少なくなり、しまいには相棒の問いかけに答えるのも面倒になる。
合戦小屋への荷揚げケーブルの下を通るあたりからはさらに傾斜が急で「このリフトに乗れたらどんなに快適だろう」といつも思う。ちょうどその時シュルシュルシューっと搬器が頭上を通過して行った、嗚呼!
今日は幸い厚い雲と木々の緑に遮られて直射日光は遮られているが、それでも汗は顎から地面に垂れ落ちて、時々トレッキングポールにもたれかかって水分補給をしなければ爺さんは干上がってしまいそうだ。第二ベンチ・第三ベンチ・富士見ベンチと一息二息三息いれ、頭の中で今回のテーマソング「I・J・I」をぐるぐる回しながら少しでも足を前へ前へ。
やがて森林の中の急登は終わり「お疲れ様ぁ〜スイカいかがですかぁ〜」の声に迎えられて合戦小屋前の広場に着いた。「スイカ下さい!」美味しい波田スイカ、今年も頂きました、塩多めに振りかけて。
スイカを食べたらもうひと登り、燕山荘まで1時間、そしたら小屋の食堂で昼飯にしよう。
高瀬川を挟んで対岸の野口五郎岳方面・遠くにチョコンと見えるのは烏帽子岳かも・5日後にはあの稜線を歩いている予定
☆岩と砂礫と這松の表銀座ー大天井ヒュッテまで
人通りが多いから銀座通り……だが、燕山荘から大天井岳方面に向かう人は案外少ない。昔は北アルプスで最も賑やかだった稜線だったと思うが、今日はちらほらしか人が見えず、この方が静かな山旅が出来て嬉しいのだが、皆さんは燕岳だけしか登らないのか、燕山荘に一泊したのちに槍ヶ岳や常念岳に向かうのか、それとも休日じゃないからなのか、そう言えば日帰りで頑張る人も結構いたようだし、人それぞれでいいけれど、燕山荘・大下りの頭くらいまでは砂礫の稜線で気持ちがいいんだけどなぁ〜。
大下りをドコドコ下って、嗚呼!勿体無いなんて思って、為右衛門吊岩への登りにかかると「あれっ、やばっ、足つってる」。そうなんです、左足を持ち上げると太ももがつる。常々の運動不足とトレーニング不足が早速現れてしまったようだ。ここから登りになるし、燕山荘に戻るなんてまっぴらだし、休憩いれてポカリいれ飴舐めて(意味ないけど)、屈伸運動数回、なんとなく大丈夫そうなのでだましだまし歩き始める。
幸いその後は筋肉の痙攣もなく大天井の分岐までやって来る。そこに先行していた若者パーティーの1人がフクラハギをモミモミ。
「つっちゃったの?」
「少し違和感があるんので休んでいるんです」
「私もだましだまし歩いているんだ。お互い肉離れにならない様に気を付けていきましょうね」
「はい、もう少しなんで頑張りましょう」
若い人もつるんだと思うとなんだか安心したと云うかなんと云うか……。
分岐を右手に取ってさあ、ラスト40分・大天井ヒュッテへのトラバース……と思ったら記憶と違って登る登る、こんなに登るんだっけ……そして歩いても歩いても道は続く続く。登って下って岩場をへズって、イヤっと云うほど歩いて休もうと声をかけようと思ったとき「見えたよぉ〜」と相棒の声……「ふぅ〜〜〜」
無事大天井ヒュッテ着……厳しかったぁ〜〜〜。
2017年8月〜9月 表銀座〜裏銀座
アルプス銀座表裏1 [北アルプス]
☆計画
お盆休みが終わった……学生さんの夏休みも終盤だ……山もそろそろ空いてくる……やっと俺たちの夏休みが始まるよぉ~~~
でっ!2017年の夏山は?と言うことになるのだが、目が行ってしまうのはどうしても北アルプス……日数的(今年は9日間)に中央アルプスや八ヶ岳では勿体無い……北海道の山と言う手もあるが数回訪れているので今回はパス……残るは南北アルプスとなるのだが……南で登っていない農鳥岳(奈良田から登るのも、そこに下るのも気が進まない)と光岳(どう言う訳かイマイチ好きなれない)以外は登っているし……で、残る選択肢は剣岳立山周辺・薬師岳や雲の平・後立山連峰の針ノ木岳〜烏帽子岳と裏銀座と言うことになる……相談の結果今年はは裏銀座で決着。
高瀬ダムから上高地までの総合コースタイム(烏帽子岳・水晶岳・槍ヶ岳の各ピストンと三俣蓮華岳〜双六岳は稜線通過)は約34時間(逆コースは約33時間)……4日では老体にはキツイので5日とするか。
車の回収は……七倉の無料駐車場に止めた場合:上高地から七倉までバス・松電・大糸線・タクシー(大町七倉間はバス便が無い)と乗り継いで行くのはどうも……それならタクシーで七倉に入り(どうせ1回はタクシー利用となる)車はタクシー会社に預かってもらう(出来るかどうか定かではないが多分可能)とした方が良いかも。
んっ!待てよ!槍ヶ岳から上高地に下山しないで表銀座を縦走して中房温泉に下れば回収ルートは……穂高駅までバス・大町まで大糸線でOK……この方が5時間長くなり1日余計にかかるが合理的じゃないだろうか。
んっ!まてよ!日本3大急登のブナ立尾根を登るのに約6時間、北アルプス3大急登の合戦尾根を登るのは約4時間……後者の方が老体には優しいので逆コースとしたいが……ブナ立尾根を登らずして裏銀座をやったと言えるのか……しかしそこで体力を消耗して双六岳から新穂高に逃げてしまい槍ヶ岳に到達出来なければ元も子もないし……悩んだ挙句変なこだわりは捨てて次のように決定。
前夜松本泊〜1日目中房温泉〜大天井ヒュッテ・2日目大天井〜槍ヶ岳山荘(槍ヶ岳ピストン)・3日目槍ヶ岳〜三俣山荘・4日目三俣〜水晶小屋(水晶岳ピストン)・5日目水晶〜烏帽子小屋(烏帽子岳ピストン)・6日目烏帽子〜高瀬ダム・プラス予備日3日(天候が思わしくないので)と言う予定を組んだ。
なお4日目の行動時間が短いのは疲れが溜まる事を考慮して休息日に当て、また時間と気力によっては野口五郎小屋泊まりとしてもいいし、さらに順調に行けば予備日を使って船窪岳まで足を伸ばしても(多分それは無いと思うけど)と言うフレキシブルに考えて予定を組んだ。
☆前泊〜中房温泉
仕事終わり20時……残った仕事は休暇明けにすることにして(仕事より山が優先……BABYMETALはもっと優先)相棒の買ってきた弁当を急いで平らげて用賀から東名高速〜圏央道〜中央道経由でルートイン松本に23時30分……荷物の最終確認後就寝。
翌日5時起床、コンビニおにぎり・稲荷寿し等で朝食……5時半出発・穂高無料駐車場にて予約していたタクシーに乗り込む(バス便にしようと思ったがA運行のため時間が合わず止む無くタクシーを奮発)
さて、のっけからの急登で爺さん婆さんの夏山2017始まり始まり!
2017年8月〜9月 表銀座〜裏銀座
ヤリはヤリでも……下山 [北アルプス]
雨がテントを叩いていた。
朝方気温が下がって寒さで目覚めた。
風呂に入って温まろうかとも思ったが、雨の勢いに押されてグズグズしていた。
夜中強まった風にブルーシートが飛ばされないかと不安だったが、なんとか持ちこたようでテントの入り口を青く染めていた。
雨音を聞きながらノロノロとシュラフとマットをたたみ、ブルーシートキッチンで今朝も昨日同様に残りご飯のおじやを作った。
小降りになった頃を見計らってテントを撤収し、ゴミを片付け雪渓の上に立った。
途中のやや急な斜面を滑りたくてアイゼンは履かずに歩き出したが、登りで感じたほどの傾斜ではなくあまり滑りが良くなかった。
杓子沢との出会い付近から雪の多そうな所を選んで小日向のコルを目指して登り出した。
途中何度も立ち止まって呼吸を整えなければならず、さほどのアルバイトでもないのにかなりきつかった。
コルで一休みしていると、杓子沢上部で轟音がして右岸からの雪崩が目に入った。
石を巻き込んで滑り落ちるガラガラという音がかなり長い間谷に響いていた。
何年か前の6月末、残雪上の大量の落石踏みながらそして避けながらトラバースしたのは、あの辺りじゃなかっただろうか。
たった2〜3週間の違いで、あるいは残雪量の違いで使えるルートに違いが出てしまう。
あらためてこの時期のルートファイディングは難しい思った。
コルからしばらく下った所に夏道を発見したが、小川のごとく水が流れていて、その先は雪に埋もれて判然とせず、踏み抜きの危険もあるので、結局倒れた枝を跨いだり潜ったりしながら林の中をかなり進まなければならなかった。
雪が少なくなってた所で夏道に戻ると沢音が近くなって、帰ってきた実感が湧いてきた。
大町温泉で汗を流している間に天気は回復し、頭上には初夏の青空が広がっていた。
今年の楽しき雪上歩行はこれで終了だが、果たして来年も出来るだろうか、少し侘しい思いを抱きながら車を走らせた。
2017年 6月 白馬鑓ヶ岳
ヤリはヤリでも……頂上ピストン [北アルプス]
何時もはネタ不足で困っているのですが、珍しい事にここ数日は書きたいことがいくつか重なって困っています。
☆先日当家に新しい家族が誕生
☆BABYMETALがKORNとUSツアーをスタート……その前にLAで行ったワンマンですごいことが
☆白馬鑓の続き……等々
書き始めましたのでまずは白馬鑓の続きからUPしたいと思います
上空は重たい雲に覆われていたが雨はまだ落ちてなかった。
インスタントラーメンを作り、昨夜の残りご飯をおじやにして急いで朝飯をかっこみ、必要な物だけザックに入れてアイゼンを履いた。
あまり気温が下がらなかったのか雪のしまりは悪かった。
のっけから夏道には行かず(まだ雪の下だし)テン場横の雪渓を真っすぐ稜線まで詰めて行く。
荷物が軽くなったとはいえ急傾斜の直登は辛い。
上空の雲は相変わらず厚く太陽の位置もハッキリしないが、足元の雲海との間に大きな隙間があって思いの他展望は良い。
頸城の山々や浅間山、八ヶ岳、南アルプス、穂高や槍そして富士山まで見えて、稜線に出た時の剣の雄姿に期待が膨らむ。
稜線が近づくとさすがに雪は締まっアイゼンの効きが小気味よくてなってきたが、私の息づかいは全く小気味よくならない。
稜線の手前の夏道の露出した所でアイゼンとピッケルをデポして頂上に向かった。
2903m、なかなかの標高の白馬鑓ケ岳。
風もさほどなく薄いダウンを1枚羽織っただけで十分だった。
期待した剣・立山は少し雲がかかって、それと分かる程度だったが低気圧が接近していることを考えれば大満足と言わざるを得ないだろう。
アンパンをかじりながら小一時間も話し込んでから頂上を後にした。
下りはアイゼンを履かず、その代わりに雨具のズボンをはいてシリセードの開始だ。
カッコ良くグリセードを決めたいところだが、最近のピッケルは短くて上手く行かない……と道具のせいにしておこう。
何時間もかけて登った斜面を「ケツがイテ―」と言いながら45分でテン場に到着……あっけなし、でもすごく楽し。
さあ、豪華夕食焼き肉パーティの準備だ……おっと、その前にひとっ風呂……水着のカップルさん失礼します。
2016年 白馬鑓ヶ岳
ヤリはヤリでも……テン場 [北アルプス]
猿倉荘の前でザックを背負った……ヨイショ!……重い!先が思いやられる。
猿倉から少し行った所で大雪渓への林道から分かれて鑓温泉への山道に入った。
ガサゴソ・パキンペキン、落ち葉を踏み枯れた小枝を踏み、靴底に伝わる感触が気持ちがいい……ただし荷の重さを無視すればだが。
すぐに夏道は雪の下に隠れて判然としない。
時々立ち止まって方向を定め、倒れている木々を避けたり跨いだりして歩きにくい箇所をひとがんばりし、やがて林を抜けて見通しの良い雪の原に出た。
少し早いがここでアイゼンを履いた。
雪は腐り気味で、時々アイゼンが効かずに踏ん張った足がズルズル滑ってしまい、これが繰り返されると意外と体力の消耗を招く。
小日向のコルで宿で握ってもらったオムスビを一つ頬張って元気を注入し、迫力を増した北アルプスを眺めながら、杓子沢と鑓温泉からの沢の出合あたりを目指して雪の厚そうな場所を選んで下る。
下りきって一休み。
ここからはテン場の鑓温泉までが辛い(私にとって)雪渓登り。
とにかく一歩一歩足を前に出すしかたどり着く術はない。
時々白馬岳方面に荷揚げのヘリが飛んでゆくのが見える。
あれに乗せてもらったら……運賃いくらだろう……多分私が払える金額じゃないだろう……そもそも人は乗せないかも……でも乗りたい……姑息な考えが頭の中を廻る。
20歩歩いて一息入れて、30歩歩いて立ち止まり、また20歩歩いて杖にすがって……を繰り返す。
仲間よりかなり遅れてやっと温泉に着いた時にはテント設営が始まっていた……あ〜シンド!
☆本日の宿
3〜4人用のテント1張。
ブルーシートで作ったダイニングキッチンは雨への備え。
早速紅茶を沸かして大大休憩。
空を見上げ、この様子なら夕焼けが見られるかもとほくそ笑む。
でも天気は下り坂なんだよなぁ〜。
☆本日の水道
鑓温泉小屋の資材と残雪との隙間にコッヘルを2個置いて滴る雫を受ける。
こんなスピードではいっぱいになるのはかなり時間がかかると思ってたが、意外にも早く他の用事をしている間に溢れてしまっていた。
1度沸騰させてから冷ましてペットボトルに移し飲料水を確保。
さて、この後は豪華夕食の調理時間だ。
☆お風呂
何と言っても今回の目的の大きな部分は温泉に浸かることだ。
誰もいないと思っていたが、ボーダーが1人温泉に浸かって優雅にティータイムしている。
待ってもいられないので「失礼」と声をかけてひとっぷろ浴びる。
体が冷えているので初めは熱く感じられるが、しばらくすると……極楽です。
完全源泉掛け流し混浴露天風呂……サイコー!……若い女性はいませんでしたが。
(注意)
先ほど現地からの連絡が入り、落石が発生し鑓温泉浴槽に穴が開いてお湯が溜まらない状態のようです。
付近は残雪が多く小屋建てが始められず、鑓温泉の夏季営業は大分遅れる模様とのこと。
またGPSを頼りに登山をすると夏道を通ることとなりますが、鎖場付近(鎖はまだ雪の下です)が非常に急斜面となっている為滑落の危険があります(実際死亡事故も発生しています)。さらに温泉より下部のルートでは杓子沢付近の雪崩と落石の危険も大きいので(今回実際に目撃)、後立山稜線から小日向のコル間の夏道はこの季節使用できません。何れにしてもルートファインディングが重要となります。
2017年6月 白馬鑓ヶ岳
ヤリはヤリでも……アプローチ [北アルプス]
雨だと思っていたが予想が外れた。
このままの天気が続くといいが、残念ながら明後日から雨、そしてそのまま梅雨入りという天気予報で、どこかの時点で雨合羽のお世話になることは避けられそうにない。
東京から早朝出発して即登山開始、しかも夏道を通らず(というか通れない)すべて雪上歩行、さらにテント泊という事になれば、老体には甚だ厳しい事なる事は目に見えている……たとえ多少の若さが残っていたとしても。
したがって今回は麓に宿をとって翌朝の出発とした。
家をゆっくり出て、宿に着くなり風呂に入り布団に潜り込んで十分英気を養ったつもりだったのだが結果は……。
2017年6月 白馬鑓ケ岳
山と桜4 [北アルプス]
今年こそは位ヶ原から登ろうと思っていたのだが結局
平湯からのバスが畳平まで入るのを待ってしまった軟弱な自分。
私のキャップを指さして「その帽子じゃ飛ばされちゃうよ」とパトロールの人
私の「上からこれかぶりますから」と指さした黄色いヘルメットにうなずく彼。
無くてもたぶん大丈夫だと思うけど
摩利支天の分岐からアイゼンを着けたのは
念のため。
肩の小屋から適当な所を登ると
しまりの悪い雪に四苦八苦その上
喘息が出かかって調子が出ない。
朝日岳を過ぎると雪も締まりアイゼンが良く効いて
呼吸もだいぶ楽になり雪に埋もれた小屋を過ぎればそこは頂上
鳥居に付いたエビの尻尾に感激。
「チョット奥の院まで行ってきます」
と言い残して南に下って行ったボーダーの彼
昼飯の用意をしているわずかな間に雪の斜面をどんどん登って行く
若い。
向こうから見る乗鞍岳はどんなだろうと興味はあるものの
では行ってみるかなどという気力もない
歳のせいと結論付けてしまう私。
岩と言わず草と言わず社と言わず
そこら中に生えた白いエビが
陽の光に輝いている。
昨日は一面のガスで視界ゼロだったとパトロールが言ってたし
午後になって上空に巻雲が出てきたし
明日は崩れるかも。
今年もラッキーな乗鞍参りだった。
すでに散ってしまった思っていたが
安房トンネルを出た所で桜の歓迎をうけた。
山桜も八重桜も
濃い色の桜も淡い色の桜も
旅館の庭にも急な山の斜面にも
あちこちに咲く桜に車の速度が落ちる。
2017年 5月 乗鞍岳
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