硫黄岳ー2枚の写真 [八ヶ岳]
1枚目:硫黄岳頂上は霧の中
2枚目:駐車場に夏の日差し
嘘だろう!と思わず言って携帯を手に取った。
なんと昨夜目覚ましセットし忘れていて、これじゃベルが鳴る訳が無い。
5時起床5時半出発の予定が、時刻は6時20分。
どうしようかとためらいも一瞬、天気も良さそうだ、出かけよう。
今の時期なら、日のあるうちに下山できるだろう。
硫黄岳の平らな頂上では、霧が立ちこめて登山者も霞んで見えた。
自分が踏む足下の石がカタカタと立てる音以外は、無音に思えた。
こんな状況も決して嫌いじゃない。
静かで良い山だ。
が、下山したとたんこの青空は無いだろう。
2014年8月 硫黄岳
雨の赤岳―杣添尾根下る [八ヶ岳]
小1時間ほどで目が覚めた。
頭上だけ雲が切れて小屋のガラス窓に青空を映していた。
これは良い兆しか……
だが、「夕食の準備が出来ました」と声がかかかった時には、外は無情の雨。
更に、「明日も太陽は期待できない」と小屋番の非情な言葉。
沈み行く太陽を眺めながら移り変わる空のグラデーションも楽しめない。
降雨時の暇つぶしにと荷物に加えた本もメガネが無いので読むことが出来ない。
これじゃ消灯前に毛布をひっかぶって寝るしかないじゃないか。
それでも一応目覚ましは4時にセットしておいた。
翌朝……
目覚ましが律儀に鳴って、雨は……上がっているようだ。
三角点のある頂上で日の出を待ったが、東の空に細いオレンジ色の線が1本引かれただけで、それも時間とともに短くなってやがては小さな点となりついに灰色の雲に呑み込まれてしまった。
山に来る度に哀愁を帯びた夕陽と厳かなご来光を味わう事が出来るなどとはけして思っているわけではないが、それにしても……。
さて帰りは横岳の三叉峰から杣添尾根を下ったわけだが、天望荘への途中で大粒の雨が降り出して、横岳の三角点も踏まず、まして硫黄岳のキバナシャクナゲを見に行く元気も無く、しまいこんだカメラを出して写真を撮るのも億劫になってあまり口も利かず黙々と歩いた。
下山して……
登山者専用駐車場と書かれた看板の前でタクシーを待つ間、時たま通り過ぎる車の中からの憐みの視線を感じながら30分以上もただただ雨に打たれていた。
やっとの思いで登り口まで戻り車の中ですべてを着替え、冷え切ったからうどんでも食べようかと近くの土産物センターの「そば、うどん」ののれんをかき分けてみたものの、あえなく品切れ(?)とオバサンに断られた。
そんな事もあるさと店を出ると、そこに観光バス到着。
件のオバサン、走ってお出迎え……「いらっしゃいませ。お疲れ様です。ありがとう御座います」とあらゆる歓迎の言葉を並べたてる。
本当は違うんだけど、なんだか「ウドンだけの君たちはは客じゃないよ」と言われた気がした。
いいさいいさ、これで全部ツキが変わるだろう。
次回の山は楽しいことだらけといこうじゃないか。
2013年 6月 杣添尾根下る
雨の赤岳―県界尾根登る [八ヶ岳]
隣の真教寺尾根の上部はもはや雲の中
「今度の休みは雨だよ」と言われても、「八ヶ岳ピンポイント予報には晴れマークも出ているよ」と反論する。
「絶対雨だってば」と言われても、「もしも雨なら温泉にでも行こう」 と「温泉」を餌に強引に夜の中央道へ乗り入れる。
双葉SAで車中泊……1時過ぎ、まだ雨は来ない……が、5時ごろ目覚めると、リアウィンドウにポツリポツリ……。
「とにかく登山口までは行ってみよう」と諦めきれない私。
ワイパーを時々動かす程度の雨に……「標高が上がれば雲の上に突き抜けるかも」と、これは私の願望。
幸い登山口では厚い雲が全天を覆っているものの、雨はすっかり上がって登山には支障が無い。
「よしよし、もう降るなよ」と願いつつ林道に足を踏み出したのだが、天気がもったのは尾根上までで、小天狗からしばらく歩いて霧の中に入ったかと思ったとたん、サァーっと降ってきて慌てて合羽を出した。
大天狗の先で雨は上がって道に影がうつるほどだったので、煩わしいものは脱ぎ捨ててフゥーっと一息ついたのもつかの間、これから岩場の連続という所で無常の雨が……降る着る止む脱ぐ降る着る……ああ忙しい。
この降りはもう本格的なもので、今日の回復の見込みは無いだろうが、いまさら下山するのもなんだし……相棒は下山して温泉に行こうかと思っていたらしいが……早くここを突破して頂上の小屋に逃げ込もうと思うばかりだった。
振り返ってみると、谷底まで真っ逆さまという感じの箇所がいくつかあって、明日が雨降りならこのルートを下るのはいやらしいなぁと思いつつ鎖を手繰った。
小屋で合羽を脱ぐと急に寒くなって思わずそばのストーブに手をかざした。
ふとカウンター横の黒板を見ると「気温5度」と書いてあって、さすが2899.2m……震える訳だ。
着替えの後、頼んだ熱いうどんとコンビニのおにぎりで遅い昼食をとってやっと落ち着いた。
さて、本でも読もうかと取り出したメガネケースの中に肝心のメガネが無い。
あ~ぁ、ふて寝でもするか。
2013年6月 県界尾根から赤岳
孫と [八ヶ岳]
「スキーに連れてって」なんて言われた日にゃ……
「朝の6時半に迎えに来るよ」って言ってたその朝6時半……
電話が鳴って、「今どこぉ~?」 「お家をでるところだよ」……
しばらくして携帯に、「今どこぉ~?」 「信号の所だだから5分くらいで着くからね」……
約束の時間の大分前から準備万端整えて玄関を出たり入ったり……
そんなに待っててもらえるなんて……爺冥利に尽きると云うもので……
チャイルドシートに乗っけて……一路ピラタス蓼科へGO!
ツツーッと3m……5m……
早く滑れるようになってほしいけど、焦って嫌いにならないように……
「じょうずじょうず」っておだててもう一度。
……
「昼ご飯が済んだらロープウェイに乗ろね」
「いいよぉ~~~」
お父さんの背中に乗って……ヒュイーっと一滑り。
オイオイ、そんなに飛ばすなよ……
カメラマンが追い付けないよ……
その先の急斜面の手前で一旦止まれよ……
あたふた爺さん滑りながらシャッターパシャパシャ。
……
……
雪だるまとカマクラで遊んだあとは……
「来年も来る?」
「来年はパパとママと……来るから、バーバとジージのサンタさんにスキーをお願いしておいて」……
っと上手におねだりされました。
2013年3月 ピラタス蓼科にて
天辺の小屋に泊まろう―下山 [八ヶ岳]
☆手振れ、ピンボケ、白トビ、何卒ご容赦
「お先にぃ」と若い二人が南に向かって行った。
一旦編笠山まで南下後、戻って権現岳を登り返して三つ頭を経て下山するという。若いって良いなぁ。
「また何処かで」と一組の夫婦が北へ向かって行った。
花好きの奥さんは、稜線の花たちに迎えられて、楽しさに満ち溢れることだろう。
この二組の人たちと語り合えたことが、山行をいっそう思い出深いものにしてくれた。
さあ名残惜しいけれど、文三郎を下山するとしよう。保育園に遅れたら大変だ。
☆ご存知の方も多いと思いますが、美濃戸口から美濃戸の間は未舗装の道です。真ん中が盛り上がったカマボコ状の部分もあり車高の低い車は要注意です。まさかカメの子スタックは無いでしょうが、2~3回底をヒットするかもしれません。実際私が美濃戸口に下って来ると、入れ替わりにJAFとヤナセのレスキューが入っていきました。強烈にヒットしたらしくオイルパンを破損、自力走行不能との事でした。ヤナセが行ったという事は……。
2012年 6月 赤岳からの下り
天辺の小屋に泊まろう―朝 [八ヶ岳]
☆日の出前
ガサゴソ、起き出す気配がして目が覚めた。
目をこすって見た時計は3時30分をさしていた。
日の出にはまだ早すぎるが、ここで起きないと寝過ごしてしまいそうだ。
だが迷った末、ずくなしの私はもう一度毛布を頭からかぶった。
☆日の出
太陽が昇る。
空も雲も、小屋のガラス窓も、近くの山々もオレンジ色に染めながら。
冷えた大地に温もりを与えながら。
私は、ポケットに両手を突っ込んでそれを眺めている。
ふと振り返ると、まだ大量の残雪を抱いた槍穂高連峰が淡いピンク色になって雲の上にあった。
「おはよう御座います」と声をかけて食堂に入った。
先に席に着いていた人の指差す方に、秀峰富士が天空の薄雲と下界の霞の間に静かに座っていた。
思わず口元がほころぶ。
みんなの顔も微笑んでいた。
東の窓からは奥秩父の山並みが見えていた。
金峰山小屋に泊まった人達は、今頃こちらを見ているだろうか。
八ヶ岳はピンク色に染まって見えているだろうか。
そして感動の言葉を交わしているだろうか。
私たちがそうしているように。
2012年6月 赤岳山頂山荘にて
天辺の小屋に泊まろう―日没 [八ヶ岳]
☆焼ける
「空が赤くなってきたよ」と言う声が聞こえた。
夕食の後、布団に寝転がって持ってきた本を読んでいたつもりが、いつの間にか眠っていた。
声を聴いた後さらにウトウトして、枕もとの足音に慌てて飛び起きカメラをつかんだ。
どうも前夜の寝不足がこたえている。
☆槍ヶ岳に沈む
友からメールが来た。
彼は槍ヶ岳に沈む太陽を狙って毎年霧が峰付近に通っていたのだが、天候との相性が悪くこれまで幾度も阻まれていた。
今年はやっと目的を達成したようで 、「紙焼きが出来たら送る」とメールの内容も弾んでいた。
その彼と山歩きをしたいと思って何十年、未だに実現出来ないでいる。
西に傾きかけた太陽の下にあるだろう槍ヶ岳、今日はそれが見えないのが少し残念だ。
2012年6月 赤岳山頂山荘にて
天辺の小屋に泊まろう―赤岳頂上山荘 [八ヶ岳]
☆小屋の外
突っ掛けを借りて外に出た。
相変わらず雲はサァーっと流れて峰の連なりを見せたかと思えば、また流れて足元まで隠す。
その度、たむろしている私達の、「おおぉ~!」だの「あぁ~あ」だの歓声やらため息やらの声が起こる。
そんな事を繰り返していたら、裸足の足が冷えてきて、とうとう小屋に逃げ込んだ。
赤岳山頂はまだ明るく、夏至を過ぎたばかりの太陽はとうぶん沈みそうにない。
☆小屋の中
「ヨッコラショッ」と若者が腰を下ろした。
「アレッ、若い人もヨッコラショって言うんだ」 「あはははは……そりゃ言いますよ」
それがきっかけで会話が始まった。
この夏大キレットに行くという彼らに、先輩面して少し自慢げに「長谷川ピークは……」などと話す。
あまり鼻を高くすると墓穴を掘るので、この辺で止めにしておこう。
さて夕食が済んだら外に出て日没を待とう。
2012年6月 赤岳頂上山荘にて
天辺の小屋に泊まろう―寄り道 [八ヶ岳]
阿弥陀岳に寄って行こう。
コルに荷物を置いて、空身になって……すぐそこだと思ったら、何の何の……岩だの鎖だの……。
見上げると、青空が顔を出して、願った通りになってきた。
頂上に着いたらちょっとの間、雲さんどいててくださいね。
さあ、もう少しで頂上だ。
阿弥陀岳には登っていないと思っていた。
今日、頂上に着いて思い出した。
3年生の時……「追い出し山行」……ここで「タニシ踊り」をやったけ。
今まであれは中岳での事だと勘違いしていた。
20人以上が輪になって……♪元気で拍手チャチャチャン……♪タニシ殿ぉ~~~♫……なんてやり出して……他の人には迷惑だったろうに……。
あの頃はバカばっかりやっていたなぁ。
着いた時のミルキィガスがあっという間にすっ飛んで、赤岳が見えたと思ったらまたすぐ霧の中。
なんだか今日の雲達は忙しい。
2012年6月 阿弥陀岳にて
天辺の小屋に泊まろう―アプローチ [八ヶ岳]
☆車中泊
たった3Km程だが、美濃戸口からのカマボコダートを考慮して四駆に乗ってきた。
これなら多少多い目にアクセルを踏んでも、前回の様に腹を当てることは無い。
後部座席をたたんで布団を敷けば、立派なベッドの出来上がり。
さ~て、五時間ほど寝るとしよう。
☆沢沿いの道
天気予報は「曇り時々晴れ」。
さっき頭上に青空が見えていたと思ったら、ガスがサーッと湧いてきて辺りを隠してしまう。
しばらく行くとまた切れ間から光が差し込む。
全く天気予報の通りだが、出来る事なら稜線に出るまでは雲が適度に光を遮って、稜線に出た時には雲はどこかに飛んで行って欲しいものだ。
そんなにうまく行く訳もないだろうが、梅雨時の山行なので降らなきゃもうけものと云う事だろう。
2012年6月八ヶ岳にて